田の神様

田の神様とは?

かみは、稲作の豊凶を見守り、豊穣をもたらすと信じられている神です。
作神、農神、百姓神、野神とも呼ばれ、穀霊神・水神・守護神の諸神の性格も併せ持っています。

田の神信仰は全国各地にありますが、石に刻んで祀る習俗は南九州、特に旧薩摩藩領にあたる鹿児島県から宮崎県の南西部だけに見られます。田の神は江戸時代中期頃より五穀豊穣を願い、各地区で田んぼが見渡せる所に置かれた石像で、地元の人たちが親しみを込めて「田の神さぁ」と呼んでいます。

田の神は、冬は山の神となり、春は里におりて田を守り、豊作をもたらすと信じられています。田の神を石に刻む(田の神石像)豊作を祈願する風習は、18世紀初めに始まる薩摩藩独特の文化です。

田の神の由来

田の神様の由来は不明ですが、次のような説があります。

  • 「五月蝿をはらう」「三把の苗」などの音からという説
  • 「三柱の歳神」や「三度神」を祀ることを指すという説

また、昔は田植の季節になると田の神がやって来て作業を見守り、それが終わるとまた去って行くと考えられていました。

田の神は、里に住む民にとっては祖霊神であり、稲作が始まる春に山から下りてきた「山の神」が田の神となって農業を見守り、収穫の済む秋にまた山に戻ると信じられてきました。

田の神神事

田の神様をもてなす神事は、毎年12月5日と2月9日に行われます。12月は収穫後に田の神様を家に招いて収穫に感謝し、2月には田の耕作に入る前に豊作を祈願して神様を田へと送り出す行事です。

田植えが盛んだった東北・北陸地方では、毎年3月16日に農神おろし(田の神迎え)を行う風習があります。また、秋の行事食「田の神上げ」は11月23日に行われます。田の神上げは、一年間田を守っていただいた神様に感謝し、田の神が山に帰るのを送る行事です。

田の神様へのお供え物

田の神へのお供えは、地域や家によって異なります。お膳や箕を用いて、神棚や田んぼの水の取口、畔などにおむすびやお神酒、苗などをお供えします。

田の神は、五穀豊穣を司る神様「農事の神様」が、暖かい春になると人々が暮らす里山へ戻り「田の神」として田畑を見守るとされています。

田の神へのお供えとして、3月16日と11月16日に「十六団子」というお供え物があります。3月16日は「十六団子の日」として、山の神様をお迎えして、その年の豊作を願う年中行事です。11月16日は田の神が山に帰る日で、お供えする慣わしがあります。

神様へのお供えは、食べ物(神饌)、衣料・宝物・金銭(幣帛)、建造物(社殿・鳥居・灯篭)の3種類が基本です。神饌は、米、酒、魚、海菜、野菜、果実、塩・水が基本で、新鮮・旬・初物・地物が基本です。